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第11話−選ばれたアシタ

 城の最上階までたどり着いた小狼。そこで目にしたのは領主・タンバルとサクラの羽根、秘術によって操られた村人たち、そしてとらわれの身となったチュニャンとサクラの姿だった。彼らに与えたダメージを、より大きくしてサクラ達に与えると脅すタンバル。村人達の容赦ない攻撃に、小狼はなすすべなく翻弄される。
「この羽根がある限り、ワシは無敵だ!」
うそぶくタンバル。しかし、彼の秘術は思わぬ一穴から崩れ去る。
 助けを求めるサクラ。彼女はつい口を滑らせてしまった。「助けて、シャオラン!」
 …敬称のない、名前だけの呼び方。それはサクラにとって「特別親しい人」にのみ許される呼称。今やサクラの記憶は、「自分の写真だけ抜き取られたアルバム」。その現実を痛感する小狼にとって、その言葉は彼の逆鱗に触れるに値した。
「いまは…、姫は…、もうオレを小狼とは呼ばない。」
 跳び蹴りを加える小狼。だがその威力は羽根の力の前にはじき返される。再び村人に囲まれる小狼。そこに思わぬ援軍が現れる。母から譲り受けた鏡を手にしたチュニャン。鏡が光を留めるや、閃光が城を、そして街を照らし出す。
 
 破れられた封印。裸同然のタンバルを追いつめる小狼。
「羽根を、返せ。それはサクラ姫の記憶だ。…返せ。」
 静かに、冷徹に、歩を詰める小狼。窮地のタンバルは、とっさに羽根の力を口にする。「これを使えば、チュニャンの母親を生き返らせることができる。だが、ワシを倒せばそれも叶わぬ夢。」チュニャンに決断を迫るタンバル。しかし、チュニャンはすでに悟っていた。どんなに恋しくても、どんなに会いたくても、二度と叶わぬ夢。決別を受け入れたチュニャンの思いを土足で踏みにじるタンバルの言葉に、小狼は一つの選択を問う。
「チュニャン。敵を討ちたいか。」
はっと我に戻るチュニャン。彼女は母との誓いを思い出す。
「秘術は、人に幸福をもたらす力。」
…彼女の決断。それを受け止めた小狼。再び間合いを詰める彼。そこに現れたのは、意外な人物だった。
 長い爪。妖艶な白い肌。凍り付くような鋭い眼差しを持つその姿は、黒鋼によって呪いを解かれたキイシムのものだった。息子共々、彼女の国へと連れ帰るというキイシム。彼女はチュニャンに母の思い出を語る。そして、一言言い残す。「強くなれ。…私と秘術と競えるほどに。」
 …タンバルが連れ去られた城。解かれた秘術、そして持ち主の手に戻ろうとするサクラの羽根。新たな記憶が、蘇る。
 
 幼いある日の、クロウ国。誕生日を迎えたサクラ姫は、誰もいないいすに向かってうれしげに話しかける。「…今日、きてくれてありがとう…。わたし、誕生日に__と一緒にいられて本当に本当にうれしい!」
…欠け落ちた、パズルのピース。思わず涙するサクラ。
 
 翌日。
 自由を取り戻したリョンヒの国。喜びに沸く村人たちの前に現れたのは、三人の年若き密偵衆だった。彼らは問う。「新しい領主を決めなくては。」…チュニャンは答える。「新しい領主はいらない。みんなで力を合わせて、どこよりも美しい街にするんだ!」
 笑顔あふれる街に背中を向ける4人。
 「やらなければならないことが、あるんだ。」
…モコナの翼に誘われ、再び異世界へと旅立つ小狼たち。彼らの行く先に広がる次のステージは、どんな場所だろうか…。