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第36話−時をこえるオモイ

「私は、己の願いを叶える!」
こう呟くや、手にした剣で夜叉王の胸を貫いた阿修羅王。だが、夜叉王の亡骸はなく、サクラの羽根に形を変えた。
 先程まで戦っていた夜叉王は、羽根が見せていた幻だった。夜叉王は、すでに病魔に冒されてこの世を去っていた。しかし、小狼とサクラの二人の姿を見て「現実」へ戻った阿修羅王は、羽根をサクラの元へ戻すとともに、月の城に願いを託す。
 
 崩壊していく、月の城。戦いを制して、月の城を手にしても、阿修羅王の願い−夜叉王を蘇らせること−は叶うことがなかった。
「あきらめれば全てが終わる。願い続けろ、強く、強く。」
阿修羅王は小狼に想いを託し、城と運命を共にする−。
 羽根を取り戻した小狼とサクラ。黒鋼・ファイと再会するとともに、モコナの導きで再び次元を超える。その時、小狼は一つの言葉を託す。それは、二人の遺品が見つかれば、それを離さず共に葬ることだった。
 
 モコナが降り立った地は、見覚えがあるはずの紗羅ノ国。しかし、何か様子がおかしい。相争っていたはずの鈴蘭一座と社の男衆の仲がひどく良い。火煉太夫につきそう禿(かむろ)に誘われた祝いの席。そこには幸せそうな鈴蘭と蒼石の姿があった。豹変とも思える変化の理由は、「決して離してはならない」とされる二人の王の像にあった。修羅国で小狼が去り際に放った言葉。その一言が、時を超えて鈴蘭と蒼石の運命を塗り変えたのだった。