トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.119−消えゆく少年

 「…きて……お…て……」
 眠りの中のさくらを呼びかける声。
 「起きて。君が目覚めないと、君の大切な人が戻れなくなる。」
 さくらは記憶を巡らせた。これまでの旅で出会った、大切な人たち。そして彼女はたどり着く。いつもそばにいてくれた、いつだって彼女のために必死になってくれた、一人の少年の事を。
 「…小狼君」
 
 押さえ込まれていた腕を振りほどいた神威。押さえ込まれた力を見て、彼はつぶやく。
 「餌がこれほどの力を持つとはな…」
 餌。血を糧とするものが食料として飼う、人の形をした魂のない「まがいもの」。
 大いなる陰謀を懐く飛王・リードが、捉えたクロウ・リードの血筋である少年を元に、「羽根を集める為なら何事も厭わぬよう、阻むものはすべて排除する」ために作られた写身(ウツシミ)。時を読み、場を読み、少年が玖楼国へ行き、遺跡の力の鍵となる少女と出会えるよう、間違えなく歩むように…。それが少年の前に敷かれたレール、「道筋」だった。
 だが、飛王の思惑とは異なる出来事が2つ起こった。
 1つは少年が写身に渡したモノ。封印の間際、少年は写身に自らの「目」を移した。それは、己の「心」をも写しとった。魔力を込めて取り除こうとすると、壊れる写身。本体と同等の力を持つ写身はそう何度も作れるものではないし、たとえ他者の心が宿っていても「羽根を集める」ことさえ違えなければ目的は達せられる…。
 だが、もう1つ、「想定せざる出来事」が起きる。それが「次元の魔女」、壱原侑子の介入だった。