トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.168−夢の中の約束

 黒鋼の里、日本国。4人はそこで、しばしの休息となった。小狼は、夢の中で四月一日君尋と邂逅する。四月一日は小狼が「永い時間」という対価を払ってまで守り抜いた男だが、四月一日は次第に夢の世界の住人となりつつあった。
 四月一日と小狼の関係。小狼はそれを知っていた。が、それを告げることは未来を辿る道筋に新たな分岐点が生まれる。それ故、小狼は四月一日にそのことを黙していた。
 その言葉を聞いた四月一日は、思わず口にした。
「さくらちゃんも…同じことを言ってた…」
夢でさくらと出会った彼は、小狼に彼女の言葉を伝える。みんなに生きてて欲しくて、自分にできることをしたこと、一方でそのために小狼を傷つけたことに対して悔いていることを…。小狼は、さくらの気持ちを理解していた。同時に、四月一日の心も共有していた。
 4人の旅路と未来が、少しでも明るいものであることを。4人が日本国へたどり着いたことは、決して偶然ではなかった。インフィニティの4人、そしてだれよりも黒鋼を思う日本国の姫・知世が、それぞれ小さくない対価を支払った結果であったからだ。同時に、いま彼らが立つ現在も、過去に二人の男たち、飛王とクロウが己が望む未来に向けて布石した結果である。しかし、彼らの想定に収まらないことが、いくつかあった。夢見で視た予定調和の世界、そして道筋を変えるために打たれた干渉。しかし、侑子は知っている。誰かが視た、まだ訪れていない未来の夢より、人の願いの方がずっと強いことを…。