トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.196−一瞬の迷い

 次元の割れ目から溢れ出す、黒い流体。それに捕らわれた、玖楼国の姫。
「さくら!」
叫びながら、少女を助けようとする少年。それに対して、虚ろな瞳の少女は答える。
「…違うの、わたしの本当の名前は…」
 二人が伸ばした手が、交わろうとしたそのとき。ふと、彼の脳裏に、昨夜の出来事が去来する。
「姫が3つの時から、あんなに頑張ってきた神職の儀式を…」
「始めたものは終わらせなければならない。そうでないと、本人に反りが来る。」
そして…。伸ばしたはずの手が、伸ばしきれなかった。
 闇に囚われた、少女。絶叫は、もう届かない。
 「未来は、常に選択の先にある。
  今、一瞬の迷いで取らなかったその手が、これからの道筋を決めた」
 選択を誤った少年を、次元の裂け目の先であざ笑う首領・飛王。そんな少年の前で、さらに追い打ちをかける光景が、始まる。
 突如、異音を立てつつ凝結する黒い液体。やがてそれは1つの黒い羽根へと形を変え、捕らわれた少女の体へと取り込まれる。
 「その黒い羽根は、死の刻印。今日この時刻まれた印が、その躯を覆い尽くしたそのときが、最後」
 衝撃の、事実。その現実を打ち消すため、小狼は次元の峡間からわずかながら姿を見せる飛王に突っかかる。だが、その実力差は歴然としていた。
 強大な、飛王の魔力。飛王が放った強烈な一撃に、小狼はなすすべもなく打ち崩れる。
 想いだけでは届かない過酷な現実が、そこに存在した…。