トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

戻 第47回

《xxxHOLiC・戻》第47回
  ヤングマガジン:2015年13号:2016.02.29.月.発売
 
「…望んだ から」「ですか」
君尋が,問いかけた。闇の中で向かい合う2人。侑子は,ほのかに笑みを浮かべている。
「小狼に必要なものを 探す時」「おれが 貴方が居てくれる世界を望んだように」「小狼も」「もう一人の小狼に」「ただ逢いたかった」
「けれど」「逢ってしまったから あんなに胸が痛かったのか」「おれが 貴方とあの世界で別れた時のように」
さらに,渡したものが小狼の助けになったか,少しでも前に進むための糧(かて)になったのかと問うが,相手は,ひとことも発しない。けれど,君尋にとって,会話はできていた。
「…だと 良いんですけれど」
突然,“ざぱ”と波の音。
下を見て,驚いた。いつの間にか,水が,2人の足元に押し寄せている。そして,胸から頭へと,いっきにかさを増し,君尋を飲みこんだ。
そこが果てのない水の中であることに驚くが,遠くを見て,さらに,
「!!」
少女が2人,手をつないで漂っていた。その1人は,サクラだ。思わず,手をのばしかけた君尋だったが,意識が遠のいていく……。
 
君尋は,目をさました。そこは寝室のベッド,服を着たままだった。
仰向けで上をぼんやり見ながら,脇の椅子に座っている静に,話しかける。
「…さくらちゃん達が いた」「きっと 小狼達を助ける為に… 夢で…」
「いたのは それだけか」
静に問われ,ことばが,ふっと途切れた。
「…侑子さんが いたよ」
「何か 言ってたか」
「何も…」「でも」「侑子さんだった」
 
戸をあけて廊下に出てきた静が,後ろ手に戸を閉めると,そこにいたモコナが,白モコナと 話せるようになった,と告げた。
「いろいろ 終わったけど‥‥」「でも,また…」「みんな 辛い思いをしたみたいだ」
直接話した白モコナの思いが,痛いほどわかっていた。
「…そうか」
片ひざをついてうなずいた静だったが,
「四月一日も,だよな」
そう言われて,一瞬口をつぐむ。
「…侑子さんが いた」「と言っていた」「目が覚めた時に」
「…そうか」
モコナも物思いに沈むよう……。
「…飲むか」
気をきかせた静の誘いに,思いを振り払うように首を振り,
「…おう」
 
先に行くモコナを立って見送ると,静は,右手を出し,平にのせたタマゴを見つめた。そして,語りかける。
「…その時が来たと 分かっても おれは本当に これを使えるんでしょうか」「あんなあいつを 側でずっとみていて…」
「…侑子さん…」