トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

第212話

《xxxHOLiC・籠》再開第8回(第212回)
  別冊少年マガジン:2011年2月号:2011.01.08.土.発売
 
目をあけた君尋は,真っ暗な中,寝間着姿で倒れているのに気づいた。体を起こすと,すぐ目の前を黒いアゲハが舞い飛んでいく。手を伸ばしかけると……。
 
「目が覚めた と」
「ああ」
君尋が答える。いつもの2人は,湯飲みを2つのせた箱膳を間に,縁側であぐらをかいていた。
「焼けた」
左手に湯気を立てている小ぶりのやかん,右手に湯飲みのふたを持つ君尋は,それを聞いて,七輪の焼き網から箸でつまみ上げたものを湯飲みに入れるよう指示し,入れたあとから,やかんの中身を注ぎ,ふたをした。さらに,ころあいを見て,ふたを取って点火器を近づける。ぼっと炎が上がった。
「やっぱり真冬はヒレ酒だなぁ」
君尋は目を細めた。焼いていたのは,さかなのヒレである。
誰の夢かと聞かれ,すぐ目覚めたのでわからないと答えたが,
「まあ」「また視りゃ分かるだろ」
「それが必要なら」
君尋は言い足した。
 
しかし,繰り返し見る蝶の夢は,なかなか先に進まなかった。誰の夢か,何か伝えたいのか,何かさせたいのか。
 
「誰に 何を伝えたいんだ」と手を伸ばすが……。
「またそこで目が覚めたと」
淡々とした反応である。
 
「少し探らせてもらうか」と気をこめるが……。
「探ったけれど分からず 目が覚めた と」
さらにつけ加えられ,君尋も同意する。
「夢の中の事で四月一日が分からないというのは 初めて聞いた」
「おれも本当に久しぶりだよ」
という次第。
 
問いかけると,こちらを向いて目の前に来たので,指先を近づけるが……。
「聞いたのに 答えて貰えず 目が覚めた と」
「その通りなんだが なんかむかつくな その言い方」
言いつつも,君尋は,運んできた皿をちゃぶ台に置く。
「餃子。 だから 老酒(ラオチュウ)」
ヒョウタン型の酒瓶が,ちゃぶ台に出ていた。
次は術を使ってみると話す君尋。仕事の依頼かもわからないのにと言われて答える。
「‥‥蝶は」「おれにとっては 特別 だからな」
 
そして,また,夢。
「また会ったな」
「さて こんだけ続けて視る夢なんだ」「おれに何か用があるのは確かだよな」
語りかけると,蝶は向きを変えて目の前に来た。
「だったら 今日こそ教えてくれないか」
あぐらをくずして座っていた君尋が,指先を近づけ,目を閉じる。
すると,蝶のすぐ下に立方体の展開図様のものが現われ,各面が囲むように閉じていって,箱そのものとなった。
「驚かせてごめん」
君尋は,立ち上がり,その箱に両手を添えるように構えた。
「教えてくれたら すぐ出してあげるから」「おれに何を伝えに来たのか」
しかし,その天面があっさりと開き,箱は元の展開図へと戻ってしまう。飛んでいくアゲハ……。目で追った君尋のその目が,大きく見開かれた。
彼の目がとらえたもの,それは,振り袖を着た侑子の後ろ姿にほかならなかった。