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戻 第18回

《xxxHOLiC・戻》第18回
  ヤングマガジン:2013年47号:2013.10.21.月.発売
 
“こと”侑子は杯を下に置いた。富士が図案化された切り子のステムグラスである。
「…そう」「いってしまったの」
店の庭先,縁側に腰をかけている侑子に,デカンタと杯をはさみ,作務衣姿の君尋は正座で向かい合っていた。
「…あの…」「山を守ってくれてたものみたいな存在が どんどん居なくなってしまったら」「この先… どうなるのかなって」
「なるようになるのよ」
必要とされなくなったものは,それがどれほどかけがえのないものでも忘れられ消えゆくしかない。良い悪いではない。侑子は,君尋の問いに淡々と話す。
そして,視線を落として目を閉じた。
「でもね」「ひとつだけ 誰にとっても斉(ひと)しいことがある」
「決して元には戻れない」
その一文を,君尋は,自身のまわりが闇に転じた中で聞いた。と,
“ぐら”「つ!」
めまいと痛みに,思わず左目を手でおおう。
「変わっていないように見えても」「同じではない」
続ける侑子の向こう,庭の景色も,形はわかっても暗い。そして,
「失ったものは」「元のままには戻らない」
目をあけた侑子がそう言ったとき,2人はもう,闇の中だった。
振り向いて,君尋に注ぐ視線は,厳しい。
「それでも戻そうとするのなら」
「…するの なら…」
視界を,何かが……,長い尾羽のある小鳥が,横切った。君尋は,左目のまわりを手でおおったまま,怒りさえ感じられるまなざしの侑子を見つめる。
 
「ありがと 百目鬼君」
笑みを浮かべて言う侑子。あたりは,いつもの光景に戻っていた。
君尋が後ろを振り返ると,杯を2個とデカンタ(ともに目の前のものと同じ品)など,酒の用意をした角盆を持って,静がやって来ていた。2人の視線が合う。
腰を落として,侑子に,
「漬物と豆腐ようで良かったですか つまみ」
「完璧よ」
もうひとりに,
「…見開いてたら落ちるぞ 無駄にでかい目が」
「見開いてねぇよ…って 無駄って,どういう意味だ,おい!」
 
侑子は,静についでもらった酒を口にする。
「でも」「山狗(ヤマイヌ)を統べるものがいってしまったのなら 夜雀とも 遠からずお別れね」
「やっぱり,夜雀は先遣(さきやり)だから」
君尋が言うと,
「それもあるけど」「夫婦だからねぇ 一緒にいたいでしょ」
「へ?」
君尋には意味不明。
「誰と?」
「貴方達が見送った 山狗を統べるものと」
「誰が?」
「夜雀が」
「ええええええ!?」
頭をかかえる。
「見た目,幼女で! 酒飲みで!」「その上… 人妻…!」
“あわわわ わわ”うろたえて両手を床についた。
「なぁに 四月一日 そういう子が好きなの?」
侑子は,君尋の顔の前で人さし指を回し,否定されても,
「全部は難しいなー どれが一番重要? 四月一日的に」
「だから 違いますって!」
静も加わる。
「幼女か 人妻か」
「なんで その二択なんだよ!」
「酒飲みなら いくらでもいるもんねぇ」侑子
「で どっちだ」静
「どっちでもねぇよ!」
しかし,
「何? もっと ストライクゾーン狭いの? 四月一日」
「百目鬼君は?」
「広めかと」
静は侑子とふつうのやりとりである。
ついに爆発する君尋。
「だから,ひとの話を 聞けー!」