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戻 第35回

《xxxHOLiC・戻》第35回
  ヤングマガジン:2014年28号:2014.06.09.月.発売
 
「…おれ」「前にも それ」「聞いたことあります」
鳥かごの包みをかかえて,君尋が言った。
「そう」
侑子の返事は,そっけない。
「初めてこの店に来て」「初めて侑子さんに会った」
「その時 そこで,そうやって煙草をふかして…」「その着物 着てましたよね」
「そうね」
「でも…」「前とは違う」
さらに,目を閉じて,確かめるように言う。
「おれは,あの時みたいに何も知らない訳じゃない」「ただ」「忘れてただけだ」
目を開き,侑子を見すえる。
「ここは『違う』世界なんですね」
侑子がいたころに戻れたわけでも侑子が戻ってきたわけでもない,そのことを言うが,
「…そうね」
侑子に,伏し目がちにだがすんなり同意され,顔が一瞬ゆがんだ。
それでも,これから言うことで間違ってたら言ってくださいと断り,店でのことを振り返っていく。
 
「おれが思い出せる最初の客」
携帯に2つマスコットをつけた女性と,同じマスコットを持ったもうひとり。
「あれ,侑子さん 対価は,どうかしましたか」
「あたしが貰う対価 という意味なら ないわね」
君尋の視線が,わずかに下に振れた。
落ちたマスコットの首を,捨てるのもどうかと思った君尋が宝物庫に入れたことも,互いの話で確かめる。こわれた人形の片割れには不似合いな模様入りの塗りの箱に,しまったのだ。
「次の客」
夜雀のときも,侑子は願いを聞いていただけだった。
「依頼を受け」「山に向かったのは 貴方と百目鬼君」
夜雀と山狗(ヤマイヌ)からの対価をもらったのもその2人で,君尋は,静から対価を選べと言われたが,電話がかかってきたのであの時は選べなかった。
「…次の,300円交換は… 客らしい存在はいなかったけれど」
その後侑子が話したと同様のこと,バイトじゃ分かるはずもないことを,君尋自身は知っていた。そのとき,気を失って見た夢にも電話が―なんと縁側に置かれた黒電話が―,出てきた。
「そのあと …女の子がきた」
侑子は話すだけで,正式なやりかたで取り替えた強運をこめられた30円を,その客は,店に来られた礼だと君尋に渡した。それも,宝物庫にある。
君尋は,話しつづける。
「ひとつだけ分からないのが 侑子さんからの頼み事です」
自身のアパートの隣の部屋に静と行くと,テレビだけが置かれていた。その後,誰かに話しかけられつづける。
「返事しちゃ駄目だって分かっているのに 何故か,何度も応えてしまって」「…振り返ったら あれがいた」
「走って逃げて 店に駆け込んで あれは 店に入れずに消えたけれど」「消える前に言ってました 『戻ってきて。だって,貴方は』」
「あれは,誰でも良かった訳ではなく」「おれへの言葉ですか」