さあ、待ちかねた同人誌即売会が開場しました。
そこで気になるのが売り上げ。ここでは、筆者(ずんける)が所属していた鉄道(×アニメ・コミック)系サークル・「X'press」(大学鉄研系:晴海時代から出展していたが2003年でコミケ出展を取りやめ)と、個人サークルで出展した「一億玉砕!!」のデータから、より多くの本を売るための方法を考えていきましょう。
- まず、有名サークル/大手サークルは別として、たいていのサークルは無名でしょう。買い手となるお客さんは、右も左もわからない状況で本を選ぶことになります。
- まず、第一の勝負は、数多くのサークルの中から、自分のサークルに目を付けさせることです。どんなにすばらしい(えげつなくても可)本を作っても、その存在を知られなければ話にもなりません。注目を浴びさせるもっとも手っ取り早い方法が、呼び止めること。結構多くのサークルが無言のまま売りさばく(なかにはただブースに座っているだけ)中、「聴覚的に」訴えるやり方は効果があります。(もっとも、ひんしゅく物に挙げられることもあるわけですが…。その辺は人それぞれと言うことで。)
また、ブースのディスプレーを美しくすることも一つ。机の表面が見えると、それだけで廃れたように見えてしまいます。本の配置の仕方も鍵になります。変わった小道具を用意して目を引き留めさせる、というのも一つの手段です。
- 第二の勝負、それは売っている本に目をいかせることです。表紙や製本の出来は売り上げ数にかなり響きます。もっとも、当事者からすれば内容の出来の方が大きいと信じたいのですが…。
発行 |
製本方法 |
販売部数 |
価格 |
96年夏 |
網がけ写真印刷+オフセット |
105部 |
\300 |
96年冬 |
コピー(袋とじ)+ホチキス止め+ 製本テープ(黒色) |
66部 |
\400 |
97年夏 |
輪転機(両面印刷)+色紙表紙+ ホチキス止め |
88部 |
\200 |
97年冬 |
輪転機(両面印刷)+カラー印刷+ ホチキス止め+製本テープ(青緑色) |
147部 |
\200 |
98年夏 |
輪転機(両面印刷)+カラー印刷+ ホチキス止め+製本テープ(いろいろ) |
192部 |
\300 |
98年冬 |
輪転機(両面印刷)+カラー印刷+ ホチキス止め+製本テープ(いろいろ) |
120部 |
\300 |
- 96年夏号は印刷屋に注文して制作しました。写真は網がけ製版(ただしモノクロ)、オレンジ色の表紙をした美しい本です。実は元より赤字覚悟の価格設定で、実際にかなりの額の赤字(5ケタ!!)が出ました。
- 同年の冬号は、95年以前からの伝統的印刷方法である、コピー(コンビニ)でした。しかし、ページがかさんだために価格を高くせざるを得ず、通常価格である\200の倍である\400に設定しました。
- 97年夏号からは母体となるサークルが大学公認に昇格したもあって、大学の輪転機が使えるようになりました。そこで、B5の用紙を用いて両面に印刷し、B4の薄い色紙(水色)でくるみ、ホチキスで留める方法を採りました。しかし、ホチキスがむき出しだったためか、本を「無料」と勘違いする人が数人いました。
- 97年冬号は、新会長・最中最名次郎を「こき使い」、カラーのイラストを描いてもらいました。(夏の時は白黒だった。)これをスキャナで読み込んだ上、パソコンのインクジェットプリンタ(EPSON MJ-800)で専用紙に印刷しました。
ホチキスをむき出しにしないために、製本テープを再度利用。裏表紙は前回も用いたB4の薄い色紙(黄色)を2つ折りにし、B5で厚さを出した上で使用。中身は前回と同じ方法を用いました。すると逆に価格が高いものだと思う方が数人。難しいものです。しかし、それほど金がかかったわけでもないのに高級なもの・お買い得と思う人が多かったです。
- 98年夏号は、前回同様の方法でしたが、表紙の印刷をエプソンの上位機種に変更しました。ところがこれが意外なコスト高を呼び、ページが冬の62ページから110ページと倍増したこともあって価格を上げざるを得なくなってしまいました。ちなみに、前回の反省点をふまえ、見本誌にカバーを掛け、大きく価格を書いたところ、値段を聞く人はいなくなりました(あたりまえか)。
- コミックマーケットの入場券は全部で三枚もらえます。コミックマーケットでは、サークル参加者は売り手であると同時に買い手でもあるわけですから、ブースを離れて「お目当て」の本を買いに行くこともできるわけです。しかし、混雑時に3人のうち一人しかブースにいないとなると、販売がおろそかになります。処理が遅くなると、せっかく買ってくれようとしてくれたお客さんをみすみす見逃すことにもなりかねません。
- 下のグラフは、97年の夏・冬、そして98年夏の新刊販売実績をグラフにした物です。販売時刻を記録し、これを元に10分おきで販売冊数を記録した物です。これによると、ピーク時には先に述べた「呼びかけ」「説明」「販売」の3つの仕事を、お客さん一人につき1分以内にこなさねばならないことがわかるでしょう。しかし、谷の部分では本当に谷です。ですから、狙い目の時間をこう定めるのが妥当と言えるでしょう。
▲97年・98年の「X'press」における10分間あたりの売り上げ曲線
- 本を買うなら開場直後か、午後二時を回ってから!!
開場直後にやって来る来場者は、朝6時よりも前から並ぶ「強者」たち。彼らのほとんどには「お目当てのサークル」があります。これらのサークルの本は、うかうかしていると売り切れになることもあり、開場直後から争奪戦となります。
自分自身が「大手サークル」と呼ばれるサークルの本を欲しいのなら、開場早々に買いにいきましょう。うかうかしていると即売り切れてしまいます。
しかしながら、中小のサークルですと開場直後から大忙し、と言うことはまず無いでしょう。お目当ての本を買い終わり、余裕ができてからブールに立ち寄ってくれる人がほとんど。その波は、開場後1時間から3時間ぐらいでピークを迎えます。
午後二時を過ぎると、今度はビッグサイトにやってくる人よりも去っていく人の数の方が多くなります。ブースに立ち寄る人の数も少なくなり、ようやく一段落。ここで他のサークルを回るのが賢い周り方ではないでしょうか。
…もっとも、中小のサークルとはいえ、この時間になると「SOLD OUT!」の札を上げるところもありますから、開場直後か2時過ぎかのどちらをとるかは「賭け」といえます。
- 目玉の本を中心に据えよう!
新刊が何冊もある場合、一押しの作品を中心に販売戦略を立てましょう。多くの人たちは本を一冊とって、それで面白くなければ去っていきます。もしくは、手に取った一冊だけを買って、それで去っていきます。目の前にある全ての本を読んでくれる人は、そう多くありません。前節でも紹介した「一億玉砕!!」の2000年夏における売り上げ管理曲線を下に紹介します。ブースの目玉に据えた「SAKURA
on a Fine Day(真説 はれ・ときどき さくら)」は正午頃にめざましいピークを迎えていますが、その他の本のピークとは必ずしも一致していません。欲を貼ると、いいことはありません。
▲「一億玉砕!!」売り上げ管理曲線
|
|