レールと鉄道
chapt.01−その先に続く鉄路
Dreams on a Railway
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 レールは鉄で出来ています。列車はその上を、鉄の車輪で走っていきます。互いに鉄というなめらかなものなので、受ける摩擦力は当然小さくなります。原理をたとえれば、ツルツルの机の上に氷を載せてとばすと、なめらかに動くようなものと考えてよいでしょう。一度力が加われば、なにもしなくても物体は前に進みます。ですから、少ないエネルギーで走ることが出来るのです。

 しかし、この性質を裏返しに見ると「滑る」ということになります。車輪の場合は「空転」、空回りのことです。つまり、どれほどモーターで車輪を回してもそれ以上スピードが出ない、こういう現象も起こるわけです。

 急な坂道(「勾配」といいます)だとなおさら「滑り」の影響を受けることになります。鉄道に詳しい人ならご存じの「碓氷峠」。先日の長野新幹線開業によって廃止されたこの場所では、たとえ特急列車であっても本来の電車の登坂力(坂を登る力。そのまんま)だけでは足りず、機関車2両の力を借りてきました。ですが、その勾配は66‰(1000m進めば66m上がる坂道のこと)、角度にしてたったの4°です。特急電車でものろのろと登っていったこの区間ですが、自動車なら時速60km以上でらくらくと走っていきます。

JR西日本・JR東海「サンライズエクスプレス」
285系サンライズエクスプレス 従来の客車よりも1時間程度所要時間が短縮され、 新世代の夜行列車として注目されている。
写真:鉄道ファン98年8月号別冊より

 「滑る」ことによるデメリットはそれ以上にあります。言うまでもなく、ブレーキがかかりにくいことです。郊外をコトコトと走る叡山電車の新鋭・「きらら」。時速60kmから、普通に止まって約140m、急制動(急ブレーキ)をかけて110m。ちなみに自動車の場合は75mです。寝台特急電車・サンライズエクスプレスの場合、最高運転速度130kmから急停車しても、450mもオーバーランします。思い通りに停まれない、加速できない。ですが、同じスピードを維持し続けるのは得意。それが鉄道の、いや線路の特徴です。

 線路といえば忘れてはいけないことがあります。自動車は家から目的地まで一直線で行けますが、鉄道を使う場合はそうはいきません。これもまた線路が持つ宿命で、列車は線路からちょっと手を伸ばしたところすら離れられません。(脱線すれば話は別ですが。)

 このように書くとあまり良いものではないように見えますが、メリットがあるからこそ普及し、使われてきているのです。次は線路だからできることを説明していきます。

 

はじめに
はじめに
参考文献
謝辞・出典
リンク・転載について
chapt.01
その先に続く鉄路
レールと鉄道
「鉄道」というシステム
鉄道「会社」のさだめ
時の流れが変えたもの
chapt.02
のぞみ、光り輝く
「標準軌」と「狭軌」
「標準軌」と「狭軌」
「直流」と「交流」
「TGV」と「ひかり」
そののぞみ、光の如く…
chapt.03
街を駆ける天使たち
天を舞うリボン
「下」を向いて歩いたら
街駆ける白馬
さらなる「新」交通
歴史との共存
chapt.04
時代が遺した巨構
上を向いて歩く時代へ
コンクリートとは何だろう
コールドジョイント
コンクリートの弱点
試行錯誤の光と影
過去への償い
未来への道標
chapt.05
光と影を抱きしめたまま
CHRoNiCLE−鉄道と事故の戦い
BRAKE−制動装置
BLoCK−閉そく方式
LoCK−連動・鎖錠
outlogue.01
青い水
汚れのメカニズム
和式便器と洋式便器
国際化とトイレ
列車内トイレの功罪
トイレ・近未来
outlogue.02
トイレ・その先に
公衆トイレの科学・駅編
公衆トイレの科学・列車編
公衆トイレの科学・考察編
《次のページ》「鉄道」というシステム ©Zunkel-Land. / 1998-2003.
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