レールは鉄で出来ています。列車はその上を、鉄の車輪で走っていきます。互いに鉄というなめらかなものなので、受ける摩擦力は当然小さくなります。原理をたとえれば、ツルツルの机の上に氷を載せてとばすと、なめらかに動くようなものと考えてよいでしょう。一度力が加われば、なにもしなくても物体は前に進みます。ですから、少ないエネルギーで走ることが出来るのです。 しかし、この性質を裏返しに見ると「滑る」ということになります。車輪の場合は「空転」、空回りのことです。つまり、どれほどモーターで車輪を回してもそれ以上スピードが出ない、こういう現象も起こるわけです。 急な坂道(「勾配」といいます)だとなおさら「滑り」の影響を受けることになります。鉄道に詳しい人ならご存じの「碓氷峠」。先日の長野新幹線開業によって廃止されたこの場所では、たとえ特急列車であっても本来の電車の登坂力(坂を登る力。そのまんま)だけでは足りず、機関車2両の力を借りてきました。ですが、その勾配は66‰(1000m進めば66m上がる坂道のこと)、角度にしてたったの4°です。特急電車でものろのろと登っていったこの区間ですが、自動車なら時速60km以上でらくらくと走っていきます。 JR西日本・JR東海「サンライズエクスプレス」 |  | 従来の客車よりも1時間程度所要時間が短縮され、 新世代の夜行列車として注目されている。 | 写真:鉄道ファン98年8月号別冊より | | 「滑る」ことによるデメリットはそれ以上にあります。言うまでもなく、ブレーキがかかりにくいことです。郊外をコトコトと走る叡山電車の新鋭・「きらら」。時速60kmから、普通に止まって約140m、急制動(急ブレーキ)をかけて110m。ちなみに自動車の場合は75mです。寝台特急電車・サンライズエクスプレスの場合、最高運転速度130kmから急停車しても、450mもオーバーランします。思い通りに停まれない、加速できない。ですが、同じスピードを維持し続けるのは得意。それが鉄道の、いや線路の特徴です。 線路といえば忘れてはいけないことがあります。自動車は家から目的地まで一直線で行けますが、鉄道を使う場合はそうはいきません。これもまた線路が持つ宿命で、列車は線路からちょっと手を伸ばしたところすら離れられません。(脱線すれば話は別ですが。) このように書くとあまり良いものではないように見えますが、メリットがあるからこそ普及し、使われてきているのです。次は線路だからできることを説明していきます。 |