鉄道「会社」のさだめ
chapt.01−その先に続く鉄路
Dreams on a Railway
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 鉄道会社も立派な「企業」なので、利益を出さなければなりません。利用客が少ない路線では一時間あたりの本数が少なくなります。たとえば一時間に1000人のお客さんが鉄道を利用するとし、一つの電車に200人乗れるとすれば、一時間に5本(12分に1本)の電車を運転しても採算がとれます。

 しかし、1時間に300人しかいない場合、せいぜい1時間に2本(30分に1本)程度しか電車を走らせようとはしないでしょう。こうなると、たとえば寝坊をしたなどの理由で本来乗るはずの電車に遅れた場合、30分待たなければならないことになります。急いでいるとき、あなたは駅でおとなしく30分も待てますか?

北陸鉄道7000系車両
北陸鉄道石川線7000系車両 最混雑時には16分ヘッドで運転される北陸鉄道石川線だが、データイムには25分間隔にまでなる。先端の鶴来〜加賀一の宮間は一日6本のみの運転となる。
写真:筆者

 鉄道の輸送力増強(*6)も難しいといえます。大都市の場合、自動車よりも鉄道で通勤する人の割合が増えてきます。しかし、多くの路線は昭和初期までに造られており、大量の乗客を運ぶということは想定していません。その結果、ラッシュアワーは非常に列車が混雑するという結果になります。どのような形態でも使える道路は行政が税金を用いて建設しますが、一企業の利益を増やすことになりかねない線路増強に税金を用いることに行政はおよび腰になりがちです。一方、鉄道会社が単独で事業を行うには額が大きすぎるということが言えます。

 鉄道会社も立派な「株式会社」なので、利益を出さなければなりません。利用客が少ない路線では一時間あたりの本数が少なくなります。たとえば一時間に1000人のお客さんが鉄道を利用するとし、一つの電車に200人乗れるとすれば、一時間に5本(12分に1本)の電車を運転しても採算がとれます。

 しかし、1時間に300人しかいない場合、せいぜい1時間に2本(30分に1本)程度しか電車を走らせようとはしないでしょう。こうなると、たとえば寝坊をしたなどの理由で本来乗るはずの電車に遅れた場合、30分待たなければならないことになります。急いでいるとき、あなたは駅でおとなしく30分も待てますか?

 第二に、普通は家から駅までは離れています。そして目指す目的地も、おそらく駅から離れているでしょう。いちいち歩いて移動するのは面倒ではないですか?

 第三に、車は渋滞に巻き込まれても、車の中は独立した空間だから時間さえ気にしなければそれなりに過ごすことが出来ます。しかし、電車の混雑は、駅に降りるまで見知らぬ他人と隣り合わせで過ごすことになります。ただ隣り合わせて過ごすだけならいいですが、スリや置き引きも出ますし、女の子なら痴漢に遭うこともあります。快適性・防犯性の面からも鉄道は格段に劣ります。

 最後に、鉄道は線路をしき、駅を作り、電車の場合は電気を引き、変電所を作らなければなりません。そして使っているうちにおかしくなる設備を整備保守しなければなりませんし、どの時刻に列車を走らせるかを考える人も必要です。そしてなによりも、駅員や運転士が必要です。

 このように鉄道は、設備を作るのにも、維持・管理をし電車を走らせるのにも多くの労力とお金が必要となるのです。ですから、どこでも鉄道を敷けばいいと言うわけではないと言うのはもうおわかりでしょう。

*6 輸送力増強の例として、複線化/複々線化、交換駅/待避駅の増加、信号機の増設、編成あたりの両数増強が挙げられる。
  鉄道の最も基本的な形態である単線(線路が一本だけ)の場合、上下列車がすれ違うには交換駅が必要となる。従って、交換駅の数が列車本数と直接関係してくる。
  複線とは線路が二本あり、上り線と下り線に分かれている。多くの都市鉄道がこれにあたる。この場合、まず信号機の数が列車本数に影響する。信号機と信号機で区切られた区間を「閉塞区間」というが、この区間に列車は一本しか入ることが出来ない。信号機の間隔が短ければ、それだけ列車の本数が増やせるということになる。
  列車編成増強は簡単に出来そうに見えるが、これによってプラットホーム(駅の乗り場)を伸ばさなければならず、その結果線路のポイントの位置を変えねばならないことがある。
  より効率的な輸送を目的として、多くの会社では「急行」や「準急」、「快速」といった「優等列車」を走らせている。乗降客数が少ない駅を通過することによる速達化、それによる列車の加減速を無くし快適性を保つことができるからだ。この優等列車の本数、そして速達効果を上げるためには、交換駅(優等列車が普通列車を追い抜く駅)の存在が不可欠になる。交換駅が無ければ、急行列車は普通列車の尻を追い続けなければならないからだ。
  さらに輸送効率を追い求めると、優等列車が走る線路と普通列車が走る線路を分離する「複々線」という結論になる。しかし、これには莫大な土地が必要となり、なかなか実現できないという現状がある。複々線の代表例としては、東京〜横浜間の東海道線(普通列車は「京浜東北線」)や大阪・天満橋〜萱島間の京阪本線が挙げられる。
 

はじめに
はじめに
参考文献
謝辞・出典
リンク・転載について
chapt.01
その先に続く鉄路
レールと鉄道
「鉄道」というシステム
鉄道「会社」のさだめ
時の流れが変えたもの
chapt.02
のぞみ、光り輝く
「標準軌」と「狭軌」
「標準軌」と「狭軌」
「直流」と「交流」
「TGV」と「ひかり」
そののぞみ、光の如く…
chapt.03
街を駆ける天使たち
天を舞うリボン
「下」を向いて歩いたら
街駆ける白馬
さらなる「新」交通
歴史との共存
chapt.04
時代が遺した巨構
上を向いて歩く時代へ
コンクリートとは何だろう
コールドジョイント
コンクリートの弱点
試行錯誤の光と影
過去への償い
未来への道標
chapt.05
光と影を抱きしめたまま
CHRoNiCLE−鉄道と事故の戦い
BRAKE−制動装置
BLoCK−閉そく方式
LoCK−連動・鎖錠
outlogue.01
青い水
汚れのメカニズム
和式便器と洋式便器
国際化とトイレ
列車内トイレの功罪
トイレ・近未来
outlogue.02
トイレ・その先に
公衆トイレの科学・駅編
公衆トイレの科学・列車編
公衆トイレの科学・考察編
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