私たちが橋を渡るとき、その橋が落ちることを考えながら渡ることはしないでしょう。 突然足下の地面がなくなったら。突然頭上から建物が落ちてきたら。 …そんなことを考えると、おちおち外を歩くことなどできないでしょう。 人の手によって作られた構造物は、いつまでもその姿を保ち続け、機能し続ける…。 外見が汚れることは別にして、多くの人はこう考えているに違いありません。 しかし…、そんな常識が根底から覆されそうな事件が起こったのです。 1999年6月27日、JR西日本の山陽新幹線福岡トンネルで、走行中の新幹線に、トンネルを覆うコンクリートのかけらが落下しました。200kgものコンクリートの塊は、新幹線の屋根とパンタグラフを破壊し、走行停止にしたのです。JR西日本はその後、総点検を実施。その結果、コールドジョイントによる落下の危険はないと、8月に「安全宣言」を出しました。しかし、10月9日、同じく山陽新幹線の北九州トンネルで重さ226kgのコンクリート塊がまたも落下。事態を重く見たJR西日本は、翌月の11月8日から12月15日まで広島〜博多間の夜間に走行する列車を運休させて一斉に総点検するといった、新幹線史上初めての調査に乗り出しました。 コンクリート塊により破壊された0系車両 |  |  | 1999年6月28日に起きた福岡トンネルコンクリート塊落下事故は、ちょうどその下を走行中の「ひかり351号」を直撃し、屋根を破損した。車両は新幹線開業時からある「0系」で、最新型新幹線ではより高速での走行を図るべく軽量化されているため、より甚大な被害になるおそれが指摘されている。 | 写真:毎日フォトバンクより | | 鉄道、そして土木構造物に対する安全性を根底から揺るがす大事件とも言える「コンクリート崩落事故」。今回は鉄道から一歩離れ、より土木工学的な観点からこの事故が起こった原因と、その対策を考えていきましょう。 まず、どうして頑丈と思われたコンクリート構造物が壊れるのでしょうか?そもそもコンクリートとは一体何でしょうか?…素朴ながらにして本質的なこの疑問を、次の節で考えていきます。 |