いま、A駅の1番線に入ろうとしている列車があります。 信号は、青。信号は1番線の方向にはいるように指示しています。 ところが、1番線と2番線を振り分ける線路は、2番線の方向を向いたまま。 あまつさえ、2番線には、先に入った列車がいます。 …さて、問題です。このあと、何がおこるでしょう?  …先の節で、列車同士がぶつからないためには「1区間1列車」の原則があること、そして、それを実現するために「閉そく」というものがあり、その区間に入れるかどうかを指示するのが「信号機」である、と説明しました。鉄道の安全は、これらが『正確に』作動して初めてなしえるもの。上に説明したケースでは、進路も、信号も間違っているというケースです。これではせっかくの「原則」も宝の持ち腐れです。 そこで考え出されたのが『連動装置』というものです。 『連動装置』とは、駅で信号を扱う人から、どの線路に進路をとればよいかという命令を受けて、脱線や衝突を起こさないように判断して、転てつ器*1や信号機を動作させるもので、最も大きな特徴は、『取扱者が誤った操作をした場合でも、その操作命令を受け付けないようなしくみがなされていること』です。 例えば、信号機と転てつ器の間に関連を付けてお互いをチェックし合い、転てつ器が列車の運行に必要な方向に開通しているときのみ、その信号機に進行を指示する信号を現示します。 信号機の指示を受けた運転士は、安心してその進路に進入してきます。このため、いったん信号機に進行信号を現示した以上は、その信号機が指示する区間にある転てつ器を転換できないようにしています。 このように、関連する各機器(転てつ器・信号機など)の間で、一方の機器を取扱った場合、他方の機器は取扱えない(動作させない)ようにすることを『鎖錠』といいます。  各機器がお互いに関連し、その取扱いに一定の順序があり、鎖錠関係があることを『連鎖』といいます。 こうして、列車がとるべき進路をより確実なものにし、決して誤らせないための仕組みを築き上げていったのです。 西成線でのガソリン動車脱線火災事故 |  | 1940年1月29日、西成線安治川口駅構内で、下り第1611列車が下り本線に到着の、最後部車両が通過中に下り1番線への分岐器が途中で転換した。その結果、後部の台車だけが下り1番線へ進入し、「またさき」のように両方の線路にまたがって走っていたが、前後の台車間隔が広まって車輪がレールを押し曲げて脱線し、次いで構内を横断していた踏切道の敷石に衝突して線路と45度の角度で横転した。 その際に動車床下のガソリンタンクが破損、漏れたガソリンに火がつき、横転した車両は猛煙を上げて全焼、190人が死亡し、82人が負傷する、日本の鉄道史で最多の死者を出す大事故となった。 事故の原因は、安治川口駅の信号掛が、この列車の到着を十分に確認しないまま、後続の臨時列車の到着に備えて分岐器の転換扱いを急いだためだった。事故列車は到着が3分半遅れていたことが、信号掛を焦らせたものと思われる。 事故の翌年、西成線は電化された。 現在は「ゆめ咲線(=桜島線)」という名称で、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ向かう行楽客を乗せて走る。 | | | 【第5章−光と影を抱きしめたまま:鉄道と事故の時絵巻:未完】 (現在鋭意執筆中です。しばらくお待ちください。) |