さて、駅や列車内のトイレには、ほとんどの場合が和式便器で、洋式は少数派、ともすれば設置されていないことがあります。それはなぜでしょうか。 駅のトイレは、他の公衆トイレに比べて10倍といわれるほどの利用者数があるといわれています。これは、電車に乗らなくても、用を足したくなったらとりあえず駅へ向かえばトイレはあるといった「安心感」と、最近の電車にはトイレがついておらず、駅まで我慢してから駆け込むという現状もあるでしょう。 人数が多いと、それに比例して汚くなるのがトイレの宿命です。特に洋式便器は別名「腰掛け便器」といわれるように、肌が便座にふれあうという宿命を持ちます。そのため、不潔であり、ともすれば場所が場所だけに変な病気が移るのではないかという危惧もあって、特に若年層を中心に和式便所を使う傾向があります。 ですが、和式便所には様々な弱点があります。 まず、中腰で用を足さねばならないため、足腰の弱いお年寄りや、身体に障害を持つ人たちには苦しいでしょう。 また、中腰になる「ポジション」をしっかりと定めないと、本来「落下」させねばならない場所から外れてしまい、その結果汚してしまう結果になるのは先に述べましたが、よく汚される便器の後ろ側は和式便器の縁は土手のように持ち上がっていて、その外側に落とされてしまうと、掃除をしても落としきれないという結果になってしまいます。すると、掃除をする側も、次に使う人も不快に感じてしまいます。 和式便器の汚れはなぜ起こる? |  | 和式便器で用を足すとこのような図になる。見ていただければおわかりのように、和式便器の大きさがいかに重要かがおわかりいただけるであろう。 | | | また、タイプにもよりますが、一般的に和式は洋式と異なり、汚物がすぐに水中に沈んでしまうことはありません。ですからにおいがたちまちのうちに立ちこめてしまいます。 さらに、洋式は高さがありますが、和式には高さがありません。ですが、配水管などを設けなければならないといったことには変わりありません。さらに、便器を埋める空間も必要となります。つまり、和式便器は床を必要以上に掘る必要があるのです。しかも、職人の技量が出来映えに左右するため、手慣れた職人を必要とします。しかし、いまやベテランの職人は高齢化し、減りつつあります。工事の上でも和式便所は嫌われつつあります。心ない利用者によって壊されてしまうと、和式の場合は思いも寄らぬ大工事になってしまいます。ここでも取り替えるだけで地中部は手を付けずとも済む洋式の良さが目立ちます。 様々な弱点を抱えているにも関わらず和風便器が用いられるのはなぜでしょうか。それは先に述べた「肌が触れ合わずとも済む」という一点に尽きます。では、その解決策はどうすればよいのでしょうか?…それは後の節で述べることにしましょう。 |