ふしぎの島のだいとう
神風に吹かれて- 初出:金沢大学鉄道愛好会会報「X'press」

 翌朝。港から直接民宿へ向かった私だが、同宿者は私の他には3人のグループのみ。わずか2箇所の宿泊施設で春休み、しかも週に一度の船が入ったというのにこの有様…。観光客が年間100名というのも嘘ではない…らしい。半日の海上生活ですっかりと三半規管が狂っていた私だったが、それでもレンタサイクルを借りて島を回ってみる。

 つい100年前まで無人島だった、絶海の孤島。それ故に残る不思議な自然。
 世界でも珍しい、淡水池で自生するマングローブ林であるオヒルゲ群落。
 樹齢100年を超える木々が生い茂る、原生林の大東神社。
 砂浜がないこの島唯一の親水施設、「海軍棒」。自然の吹き溜まりを活かした海水プールで、波の満ち引きとともに水位が変わるので魚やエビとともに泳ぐこともできる。

 しかし、この島の何よりの謎は120箇所を越す洞穴である。太平洋の孤島なので、海底火山が噴火して、その溶岩によりこの島ができたのか…とも思ったがそうではなく、実際は大洋中に発達する環状の珊瑚礁が数回の隆起を経てできたサンゴの島なのだそうだ。 それでこんなにも「あなぼこ」な島になったというわけだ。

 珊瑚の主成分は石灰質である。だから、水と反応すると溶解し、鍾乳洞が形成される。島の中心部にある「星野洞」は、長さ375m、内部に1000坪の大ホールを擁し、石筍・つらら石・ストロー・ヘリクタイトが完全な状態で残る沖縄随一の鍾乳洞らしい。島内一週がてら、どうせ暇な私はこの星野洞へと出かけてみた。

 地図を見ながらたどり着いたそこには、畑と小屋、そして島内では珍しいジュースの自動販売機がある。が、鍾乳洞の入り口とおぼしき物は見あたらない。その上、小屋の中にも「入場券を買ってください」と書かれた札があるだけで、だれもいない。謎だ…。
 と、しばらく待つと、畑を耕していたおばちゃんがこちらに気づき、歩み寄ってきた。
 まさか…と思った予感が的中した。この人が受付で、暇なときは農作業をしているらしい。
 「はいはい」と言った感じで鍵を持ち出し、私を導いてくれた先は、どう見ても直径10〜20mほどの小山にしかみえない。「うそだろ、おい…」と思って開けられたドアの先には、たしかに長い長い地下へと続く通路がそびえていた。
 「バチン!」と電気のブレーカーが入ると、照明が灯された。「どうぞ。」…どうぞといわれてもなぁ…。「……」と考えているうちにおばちゃんはさっさと退散してしまった模様。やはり一人で行かねばならないらしい。

 長い長い道の先には、扉があった。どうみても用具室の…。
 いぶかしさげに扉を開けると…、おおっ、鍾乳洞!
 大きさもかなりのもの…どころではない。圧巻である。

 歩みを進めると、自動照明でオレンジ色の光が内部を照らす。冷気ではなく湿気が充満していたが、数字がウソではないと納得させる広い空間にいるのは、自分ただ一人。静寂と光があたりを包み込む、神秘的な空間。それを独占できる喜びは何物にも代え難い。

 この洞穴、きちんと整備されたのは数年前までで、それまではロウソクを手にロープを頼りながらの見物…というより探検だった。…と、どこかで記憶にあるシチュエーション。この洞穴を全国に知らしめたのは、かの名高い探検家、「川口 宏」。そう、誰もが一度は子供時代に耳にした、

「♪かわぐち〜ひろしが〜 ど〜くつには〜いる〜
か〜めらさんと〜 しょうめいさんの〜 そのあとにはいる〜…」

というアレである。もしや曲中の洞窟ってもしやこれのことか?!…思わぬ感動が胸にこみ上げる。と同時に不安がよぎる。「サソリやヘビはいないだろうな…」。

(注:大東諸島にはサソリはおろかハブもいません。通常は…。)

コンテンツ


ゲテ物探して三千哩

 ゲテ物達の想ひ出
 知られざるJRの迷作達
 沖縄の「味」
 異郷の味わい…シンガポール
 番外編〜どこかヘンだぞ、このジュース〜


神風に吹かれて

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 さらば、だいとう


瑠璃色の刻

 Let's Start Hostling!!
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 Break out !!
 Searching for LAPUTA , and...


私が愛した羽丘芽美
(前編)

 奇人、シンガポールを旅する。
 日本の代表文化?セーラームーン
 ああ、愛しの芽美ちゃんっ


私が愛した羽丘芽美
(後編)

 北の大地にしっぽの残像を求めて
 襟裳岬…北海道三大ガックリ名所!?
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 北へ、北へ…真の北海道、ここにあり!
 終わりよければ全てよし…だが!?


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