北へ、北へ…真の北海道、ここにあり!
私が愛した羽丘芽美
(後編)
- 初出:金沢大学鉄道愛好会会報「X'press」

 私以外宿泊客のいない美幌YHに宿泊し、翌日特別快速「きたみ」で旭川、そして塩狩へ。毎年2/28に行われるアイスキャンドルや塩狩峠で知られるこの地、かつて、峠を逆送し始めた列車を、命賭けでくい止めた車掌さんのお話からはじまる。

 このアイスキャンドルを告知するポスター、道内の多くのYHで掲示されていたものだが、これを描いたのが、かつて大学の漫研にも所属していたというヘルパーさんというが…何とまあ絵がロリロリなこと。ロリコンなJRレギオン氏が見たら喜ぶな、きっと…。そう思えるような絵柄であった。
部屋においてあったその方の本を読む。

「トラベル・ガール」。

うっ、巻末のこの「おくづけ」。
こんなものが付いている本は、売られる場所も決まっている。
それはどこかって?有明でんがな、あ・り・あ・け(*5)。
当時は晴海だっただろうけど。
有明と聞いて、「お台場」とか「青島だぁ〜」などと言える方は、まだまだ「一般ピーポー」。
ああ、この言葉を聞く度に、我知らず思う。
「夏はあついっ!!」

(*:「オタクの祭典」コミックマーケットの事です。)

 翌日。
 旧深名線沿線でもある、日本一の厳寒の地、母子里を目指す。
 母子里と聞いて宿舎の名前が一発で思い浮かぶ方は、

「さすがっ!」

って思っちゃいます。

「母子里一刻館」。

 ああっ、三鷹さんっ!と思ってしまったのだが、名前の由来はそうではないらしい。

 しかし、この宿は素晴らしい宿である。
 食事の際に出てくる酒の種類(自家製)が、その数なんと35種類!!(ただし、そのうちの一つしか選べないのが玉に瑕…35連泊すれば話は別だろうが。でも、それじゃ「母子里亡命」だよ。)そのラインアップを見ると、ゆず、やまいちご、パイナップルから、マムシまで。しかし、「金沢大学ゲテモノ戦隊・MJ-Project
G」のメンバーである私が、この言葉を見逃すはずはなかった。

「クマザサ」
「アイヌネギ」。

ちょうど連泊する予定だったのがちょうどよい。

 初日、クマザサ(*6)。
 色からして「クマザサ」。不気味にフルーティー。
 二日目、同宿者をそそのかしてアイヌネギを頼ませる。
 相変わらず、色がえげつない。
 においはニンニク(より正確に表現すると、金沢にある「第七餃子(*7)」の香り、とでも呼ぼうか)。
 味わいは…エゲツないの一言ですな。ありゃすごいわ。

他に、この宿のすばらしさを列挙すると、 

  • 車のBGMがテクノバージョンの「しょじょ寺の和尚さん」(だっけ)
  • トイレにあるカレンダーが、なぜか金髪のはだかのねーちゃん。しかも、複数個ある。
    (女子用は違っていた…気になったから見てみたのだが。ここがえりもYHよりましなところ。)
  • お風呂マットが「美少女戦士セーラームーン・セーラースターズ」。
  • ねこ。
    2匹いるが、2匹とも変わり者。一匹は「しっぽ」がない(←ああっ)。
    もう一匹はやたらデブ猫。体重が7Kgある。
    しかも、自ら「はかり」の上でくつろぐ癖がある。
    …はかりの上に、クッション付きのかごを置く宿主も、結構性格がいいと思うが。

 なかなかにして「いい」感じである。
 宿帳に名前・住所・電話番号、そして前日の宿泊地と北海道で一番好きな場所を書く。
(書く欄があるのだから仕方がない。)
 書いたあと、見ちゃあいけないと思いながらも、他の人のものを見てしまう。

お気に入りの場所…一刻館のトイレ。
前日の宿泊場所…久里浜信号所。
(京浜急行の、乗務員仮泊所らしい)

…何なんだ、いったい。

 母子里は日本一寒い地である。

 夜、宿主さんが懐中電灯を出して、「これで照らすと、ダイヤモンドダストが見えるよ」とおっしゃる。夜九時ぐらいだったであろうか。たまたま泊まりあわせた富山大学演劇部の女の子と外に出る。…あ、確かに見える。

 ダイヤモンドダストは、水蒸気が昇華して、光に反射することで生じる。なかなかきれいなものである。しかし、こんなことのためにわざわざこの地を訪れたわけではない。

 がさごそとカバンから取り出しましたる一冊の本、こちらはタネも仕掛けもございません「赤ずきんチャチャ・第8巻」(*8:執筆者は旅先でしか赤ずきんチャチャを買わないという妙なポリシーを持つ)。

 夜12時を回ると、気温はますます落ちて、氷点下20℃に達していた。この状況で、この本一冊を読み切る。これが通の読み方である。

 この気温だと、濡れたタオルを空中で10回振り回すと、アイスバーになる。ついでに、バナナじゃ釘は打てない。
 しかし、寒い。当たり前だが、寒い。半分ほど読んだ時、
 「なぜ私はこんなところでこんなことをやっているんだ」
というごく当たり前のことに気づく。それでも、意地でも読み終えようとするところがバカである。

 手がかじかんで動かないこと、なかなか集中できないこともあって、一冊読み終えるのにえらく時間がかかった。結局、内容を楽しむどころではなく、読み終えた時は、身も心も誠に寒かった。このとき、気温は氷点下25度を記録していた。
 本当は私の「ギャグセンス」も修行して、夏でも納涼感を与えるまでにしたかったのだが…。

 翌日、旧深名線跡をクロスカントリースキーでたどる。雪質もよく、景色も林道のようですごくよい。ただ、線路跡は雪に埋もれて見えないし、目的地などないから、折り返し地点がわからない。もとい、決まらない。
 隣の駅まで…といってもなんと20kmも先にある。
 人一人いないし、あるのは獣の足跡のみ。
 迷子になったらどーしよーと思いながらも、今度夏に来たときは、朱鞠内までハイキングでもしようかなー、などと思った一日であった。


 稚内、留萌を経て、次の目的地、美瑛。
 母子里の時点で目的の8割方終わったようなものだから、あとは思いつくまま流されていけばよい。ここでもまた、クロスカントリースキーをやる。パックというか何というか、あらかじめプログラムが組まれているから、こちらとしては楽である。岩尾別のものより楽だし、母子里より距離は短い。景色はよかったが、印象は「山から滑って降りただけ」だった。

 YHに戻り、しばらくすると、林から天に向けて、ぼやっとした赤い一筋の柱状のものが見える。
 サンピラー、日本語にして「太陽柱」である。なかなか神秘的なものである。

 その夜、というよりは深夜、目覚ましに起こされて外に出ると、清々しい寒さの、満天の星空の中でも、ひときわ光り輝く彗星が見えた。そのとき地球に再接近していたという「ヘル・ボップ彗星」である。

 ふたすじの尾が見える。
 尾=しっぽ。

 そういえば、セイント・テールの第19話にも、こんな話があったっけ。

 ああ、それでアスカJr.が

「オレの願いは、神様だからな」

 と言ったのか。…彗星を見ながら、他に見ていた二人とは、全く別次元なことを考えていた私。

 そのあと、再び床に入ると、聖良さんに起こされる夢を見た。
 …こんな人生でいいんだろーか… 

コンテンツ


ゲテ物探して三千哩

 ゲテ物達の想ひ出
 知られざるJRの迷作達
 沖縄の「味」
 異郷の味わい…シンガポール
 番外編〜どこかヘンだぞ、このジュース〜


神風に吹かれて

 南大東島夢紀行
 絶海の中のだいとう
 ささやかな小舟のだいとう
 ふしぎの島のだいとう
 南だいとう共和国
 さらば、だいとう


瑠璃色の刻

 Let's Start Hostling!!
 Pretend Oneself
 The Memory of Hostels
 Break out !!
 Searching for LAPUTA , and...


私が愛した羽丘芽美
(前編)

 奇人、シンガポールを旅する。
 日本の代表文化?セーラームーン
 ああ、愛しの芽美ちゃんっ


私が愛した羽丘芽美
(後編)

 北の大地にしっぽの残像を求めて
 襟裳岬…北海道三大ガックリ名所!?
 道東へ…BGMは「約束はいらない」!?
 北へ、北へ…真の北海道、ここにあり!
 終わりよければ全てよし…だが!?


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