トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

戻 第14回

《xxxHOLiC・戻》第14回
  ヤングマガジン:2013年39号:2013.08.26.月.発売
 
「で」「今度の客は幼女で どきどきして大変だった,と」
君尋と静は,校庭の木の下にシートを広げ,お昼を食べていた。
「してねぇよ!!」「おれが 言ったのは!」
静は,その大声には君尋の側の耳の穴を人さし指でふさぎ,サンドイッチを食べている。
「夜雀が! 見た目,幼女だったのに! 侑子さんくらいすっごい酒飲みで! ハイボール,つうか もうあれ,ウィスキーのロックだろってのを ジョッキでぐいぐい飲んで!」「店にあるウィスキー全部飲み尽して 夜中に買いに走れって言われるかと思って どきどきして!」
「なんでか分からんが,急に 焼きそば食べたいって言い出して! それも,オムそば 卵ふわっふわっで とか,注文つけられて 大変だった! だよ」
 
食事は進む。
「で」「その夜雀は おまえにどうしろって」
「なんで おれがやるの決まってんだよ」
「…侑子さん だからな」
君尋は,また面倒そうなことが回ってきたとわめき,侑子の指定だからと,静の加担も通告する。「おう」とあっさり返され,とまどうが……。
「弁当と,あと 夜食も作ってこい 1週間分」
に,くいもん目当てのいやしん坊めと声を荒げ,今夜24時静の寺でと,通告した。
 
静の寺である。作務衣姿の2人が,縁側で,酒と料理を間に置き,外を向いてあぐらをかいていた。
「で」「24時はとっくに過ぎたが」
静のことばに,君尋は,すごい方向音痴で店来た時もやっと来れたと泣いたくらいなので,また迷ってるのか,と気づかう。
そのとき,いきなり,ざっ。雨である。
「来た!」
君尋が腰を浮かすと,
「やっと見つけましたー!!」
宙に帯の羽を大きく広げた夜雀が,君尋の目の前に出現した……。
“ごん”と大きな音。
「とりあえずは どいてやったほうがいいかもな」
と,静。
夜雀の下で,仰向けの君尋が目を回していた。
 
ごめんなさいと泣いている夜雀を,君尋は,おろおろしながらなだめるが,静は,
「今以上,阿呆には ならんだろ」
「なんだと てめぇ!!」
夜雀は涙を浮かべながらも,木おけで氷に冷やされているガラスの「容器」とその脇に置いてあるおちょこに目をやり……。いきなり,そのとっくりを両手でかかえて“ぐいーっ”
「待てーい!!」
 
「ごめんなさいー」
言いつつも,正座の夜雀は,酒のはいったグラスを両手でしっかり持っている。おけの氷には,とっくりでなく,久保田の「生原酒」一升瓶が“どん”と立っていた。
「確かに 酒豪だな」
2人のやり取りはそっちのけで,本人はじーっと一段重箱の料理を見つめている。
君尋に食べますかと勧められ,“こくん”
小皿に,まずは,だし巻き。ひとくち口に入れると,目と口を大きくあけて,固まった。
「うまいか」と,静。
“こくこくこくこく”
「これも喰え これも」
ほかの料理もとってあげる。自作でもないのになんで偉そうなんだと抗議する君尋には,
「おまえも喰え」
「もっと喰え」
田作りを食べると,あれこれつぎつぎ取ってのせる。小皿は“こんもり…”
「てめっ! 適当にのせんな!」
やり取りはまだまだ続きそうだったが,夜雀が,小皿と箸を前に置き,居ずまいをただした。
「やっぱり」
両手を前につき,君尋の目を見上げる。
「昨夜も 思いました」「貴方ならきっと,と」
「お願いします」「あの子を 助けてください」