ささやかな小舟のだいとう
神風に吹かれて- 初出:金沢大学鉄道愛好会会報「X'press」

 南大東島へと向かうフェリー『だいとう』は、総トン数699トンという長距離航路にはあるまじき小ささである。指定された船室は、よくある10人部屋の雑魚寝の2等和室である。出航一時間半前に乗船したにもかかわらず、既に帰省とおぼしき高校生と島民の姿が見られる。私は窓際の一角を陣取り、来るべき出航、そして14時間の旅路に備えた。

 それにしても…、小さい船だ。
 風呂はおろかシャワーもない。
 夕食と朝食…を取るべき食堂もなく、あるのはカップ麺の自販機だけ。しかも、日清食品とか東洋水産(マルちゃん)ではなく、よりにもよって「徳島製粉」オンリーである。

 え?ご存知ない?…ここの特色はCMにある。実に精巧に作られた?巨大な一万円の看板へ向けて何人も走っていく「一万円が、当たる」、そして「ほんまにソースがええんか?」「そーっ、ス!」と決める「金ちゃん焼きそば・ソース革命!?」というお寒い物を量産。さすが、徳島県人のギャグセンスは日本最高水準。
(ちなみに、「ギャグ」の原義は人を黙らせることにあるそうな。ついでに、私も徳島出身。)
でもなんで沖縄県内航路で徳島製粉なんだろう?

 出航40分前。どかどかと船室に、8人組の茶髪なお兄さまがどかどかと入ってくる。
 ああ、これが「どかちん」(年度末の建設工事者)か…。
 円陣を組む彼ら。しかも、トランプをやり出す。うわ、うるせー…。
 …最悪に輪をかけそうな予感を十二分に感じながら残り時間を過ごす。
 船内に、蛍の光が流れる。にわかに船内に緊張が走る。そして…、出航!

 太平洋。身近にありそうだが実は遠い未知なる海。
 港から離れるほどに、波はそのうねりを上げてゆく。
 出航後程なく眠りについた私が再び目を覚ましたのは、出航から4時間後の21時のことだった。太平洋の荒波の前に、船は為すがままに揺らされる。それにも関わらず誰も酔ったそぶりを見せないのはすごい…。

 次第に平衡感覚が無くなるのを感じながら、甲板へと出る。すでにあたりには光を発するものは一つもない。その先にあるのは遙か遠くの大東諸島のみ。星一つない闇夜、それを映し出す漆黒の海。黒一色の世界では上下感覚すら無くなる。ただ感じるのは、足下の海が立てる潮騒、頬に触れる潮風。異次元に吸い込まれそうな幻覚。乗船券に記された行き先はどこか見知らぬ世界なのではないか?…そんな不思議な錯覚に身を任せ、ゆったりとした時を過ごす…。

 ふと横を見たら雑種のイヌ。そうか、お前も…。

……(しばしの思考)……。

 なんでイヌがここにいるの?

  (注:乗船客の連れでは無かった模様。もしや船上飼犬?)

コンテンツ


ゲテ物探して三千哩

 ゲテ物達の想ひ出
 知られざるJRの迷作達
 沖縄の「味」
 異郷の味わい…シンガポール
 番外編〜どこかヘンだぞ、このジュース〜


神風に吹かれて

 南大東島夢紀行
 絶海の中のだいとう
 ささやかな小舟のだいとう
 ふしぎの島のだいとう
 南だいとう共和国
 さらば、だいとう


瑠璃色の刻

 Let's Start Hostling!!
 Pretend Oneself
 The Memory of Hostels
 Break out !!
 Searching for LAPUTA , and...


私が愛した羽丘芽美
(前編)

 奇人、シンガポールを旅する。
 日本の代表文化?セーラームーン
 ああ、愛しの芽美ちゃんっ


私が愛した羽丘芽美
(後編)

 北の大地にしっぽの残像を求めて
 襟裳岬…北海道三大ガックリ名所!?
 道東へ…BGMは「約束はいらない」!?
 北へ、北へ…真の北海道、ここにあり!
 終わりよければ全てよし…だが!?


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