コンクリートとはなんでしょうか。 まずはコンクリートとは何者かからお話ししましょう。 コンクリートとは、複数の材料を混ぜ合わせて作られた物です。主役となるセメントは、石灰石と粘土を4:1の比率で混ぜ合わせ、高温の焼炉にかけられたあと、3%ほどの石膏を混ぜ合わされてできあがります。このセメントに細骨材(砂)(*1)と粗骨材(砕いた石や砂利)(*2)、そして水を混ぜ合わせます。これらのバランスによって、コンクリートは成り立っています。 ここで、ケーキを作ることを考えてみましょう。バターをクリーム状にし、塩とパウダーシュガーを加え、よくほぐした卵を加えます。そして、ふるった粉を加え、ゴムべらで全体がなめらかになるまでよく混ぜます。この過程がセメントに水を加え、骨材を練り混ぜていくコンクリート製造の第一段階に似ています。ケーキはオーブンの熱で固まっていきますが、コンクリートはセメントと水の化学反応によって固まっていきます(*3)。このとき、細骨材や粗骨材を巻き込むことで硬さと大きさを持っていきます。 スポンジケーキの作り方 |  | 下準備でふるっておいた薄力粉をメレンゲに加える過程。手早く木べらで切るようにさっくりと混ぜ、最後の粉を加えたら完全に混ざる手前で止める。「粉を均等にさっくりと混ぜることが大切」なそうな。 | | | 「鉄筋コンクリート」という言葉を聞いたことがあるでしょう。これは、コンクリートの中に鉄筋を入れた物です。コンクリートは押さえつける力(圧縮力)に対しては強い抵抗力を発揮しますが、引っ張る力(引張力)に対しては意外と弱い物です。ここで、下の図を見てください。 圧縮力と引張力 |  | 両端で支えられた単純はりにおける変形をモデル化した。はりの上面に力が作用すると、上面には長さが縮まろうとする=圧縮力が働くが、下面では長さがのびる=引張力が作用することになる。 | | 橋の上におもりが載ると、上側には押さえつける力が作用しますが、下側には逆に引張の力が作用します。そのため、引張に対する対策が必要となります。そこで、足りない引っ張りに対する抵抗力を補うために入れられたのが「鉄筋」です。鉄は押さえつけにも引っ張りにもほぼ同じだけの、非常に強い抵抗力を発揮します。そこで、鉄筋の力を借りてコンクリートを強くしようというのが「鉄筋コンクリート」なのです。鉄だけで作られた構造物は高価ですが、その鉄を少量取り入れることで、安価なコンクリートにも十分な強度を持たせることが可能になります。 粘り気を持ち、流れを持つコンクリート。そのままでは形を作り上げることもできません。型枠に流し込み、その型枠の中で固めあげることで橋や建築物といった構造物を作り上げていきます。コンクリートは先述したように、セメントと水、そして砂や石などといった骨材を混ぜ合わせて作ります。この作業は多くの場合、工場内で行われます。工場で作られた、固まる前のコンクリートはドラムをゆっくりと回転させながら走る「コンクリートミキサ車(*4)」に載せられ、現場へと運ばれます。そしてコンクリートポンプを用いて型枠の中に入れ、まんべんなく行き渡るようにした後、固まるのを待って予め作られた型枠を外します。 ここまでの話がコンクリートというものの本質です。それでは、どうしてコンクリートを使った構造物が壊れていくのでしょうか。第三節から第五節で、山陽新幹線におけるコンクリートにまつわる事故とその原因についてお話をしましょう。 鉄筋で支えるコンクリート |  | 浅虫治水ダム建設工事現場の写真。杭や床版における鉄筋の配置がよくわかる。コンクリートはこのあとに流し込む。 | | | (*1) 細骨材=10mmのふるいを全て通り、5mmふるいを質量で85%以上通過する骨材。 (*2) 粗骨材=5mmのふるいに質量で85%以上とどまる骨材。 (*3) コンクリートはセメントペースト中に含まれる水が乾燥して固まるのではないことに注意。 (*4) 正確には「コンクリートアジテータ車」という。 | |