質問事項を青色、回答部分を赤色で表示しています。 【質問 1】 列車内トイレといえば汚物を即列車外に排出する「垂れ流し」と、681系サンダーバードをはじめとする車両で用いられるタンク内の水を循環させる「循環式」、285系寝台電車・サンライズエクスプレスで採用している空気の力で汚物を吸引する「真空式」が想起されますが、それぞれの機構(仕組み)やメリット・デメリット(コスト面を含む)をお教えください。また、「カセット式」というものがあるらしいですが、それについてもお答えいただければ光栄です。 また、それらをふまえ、今後投入する列車のトイレはどのようになるのかをお教えください。 ○垂れ流し 正確には開放式と呼びます。 その名の通り汚物を消毒、消臭剤の入った水とともに列車外に排出する方式です。 [メリット] 車両コストが安い。 汚物処理装置不要。(当然ですが) [デメリット] 現代となっては、人糞を大地に直接返すのは社会的に問題です。 | ○カセット式 汚水のうち、固形物をカセットフィルターにより捕捉して適宜焼却し、汚水は車上第1貯水タンクで塩素消毒剤により消毒されます。 そして、第2タンクで還元剤により中和された後、駅停車時に排水電磁弁を開くことで、浄化処理された汚水が排出されるしくみになっています。 [メリット] 大きな貯水タンクを必要としない。 下水処理装置を運転区所に必要としない。 停車時に排水するので社会的公害の問題もなく、車両整備、保線担当 者への衛生面も問題が少ない。 [デメリット] 特にはありません。 | ○循環式 汚水を消毒処理し、その水を便器に流す方式です。 走行に応じて、適宜運転区所(車庫)にて汚水を抜き取ります。 [メリット] 汚水はすべて下水処理されるため、社会的公害はない。 また、循環利用することで、運転区所で抜き取るまでの期間を長くできる。 [デメリット] 運転区所に汚水抜き取り及び下水処理装置が必要になる。 ろ過器、ポンプのメンテナンスが必要。 目詰まり・モータ焼き付けなどの故障も多い。 | ○真空式 車両床下空気だめ(車両には、ブレーキ・自動ドアなどに使用される空気を床下のコンプレッサーによって貯留しています)より空気を噴射することで配水管を負圧にし、汚物を吸引する方式です。 便器に流す水量を少なくし循環させずに長時間貯水させることを目的としています。 現在500系のぞみ、キロ29形式アストル改造車、285系サンライズエクスプレスなどに導入されています。 [メリット] 循環ポンプが不要であり、車両コストは比較的低くなる。 摩耗部品・可動部品が少なく、汚物(固形物)によるトラブルが少なくなると予想される。 [デメリット] 循環式と同様に、運転区所に汚物抜き取り及び下水処理装置が必要である。 | ○今後のトイレについて 今後の車両内トイレの主流は循環式もしくは真空式になるものと思われます。 しかし、コスト面、構造面での改良は逐次行われるでしょう。
【質問 2】 「垂れ流し」車両の現状をお伺いします。 すなわち現在御社が所有されている車両のうち、どれぐらいがこの「垂れ流し」に当たるのでしょうか。また、そのような車両が配置されているのは主にどこでしょうか。 地方を中心に少数ではありますが、ディーゼル車、電車ともに存在しています。 社会的問題を含めて、早急に対処すべき問題であり、汚物処理装置設置を全社的に順次行っているところです。
【質問 3】 高山線・越美北線をはじめとする各線で走る新型ディーゼルカー「キハ120系」にはトイレがついておりませんが、その判断に至った経緯をお教えください。 また、今後登場する普通列車にも列車内トイレがつかないことになるのでしょうか。 キハ120系はローカル線を主に走行し、走行時間も比較的短くトイレの利用頻度も少ないうえ、1両運転ということからお客様のスペースを確保するため、車内にトイレを設置せず、お客様には駅のトイレを使用していただくというコンセプトに至りました。 今後生産される車両も、走行距離や走行する地域、そしてこのキハ120系での反響を考慮して、列車内トイレ設置の有無を検討しています。
[質問 4] 現在、列車内トイレというと和式のものが中心のようですが、洋式のものが中心になる可能性はありますでしょうか。 当社の681系サンダーバード、はくたかはすべて洋式トイレとなっています。 また、285系サンライズエクスプレスも一部を除き洋式トイレとなっています。 洋式トイレが列車内トイレの中心となる可能性は十分にありますが、より多くの人のニーズにお応えするためにさらに検討を行い、今後の方向性を考えていくことになります。
[質問 5] 現在航空機をはじめ、JR九州や南海電鉄の特急用車両では女性用トイレが設けられています。御社でも283系「オーシャンアロー」にて導入されておられますが、この女性用トイレについて御社ではどのようにお考えでしょうか。 当社の283系は「女性にやさしい車両」というコンセプトで、女性用トイレを設置しています。 これまでも、レディースカーなど同様の取り組みもありました。 今後、これらの取り組みに対する反応を調べ、よりよいサービスができるよう検討を行っています。
[質問 6] 列車内トイレに於いて、一回用を足すごとに流す水の量はどれぐらいでしょうか。 カセット式では、1回あたり約2.2リットルです。循環式でもほぼ同様の水量を流しています。 また、真空式では約0.3リットルと非常に少ない水量となっています。
[質問 7] 手を洗った後の水はその後、どのように列車外へ排出されるのでしょうか。 特殊な例(新幹線など)を除き、基本的に車外に排出しています。
[質問 8] 列車内トイレの汚物及び浄水の水タンク容量をお教えください。また、それはすなわち何人分に該当するのでしょうか。 トイレの方式、車両形式により大きく異なるのですが、循環式の場合でおよそ220リットル、真空式(アストル)で約350リットルとなっています。また、カセット式ではおよそ50リットルとなっています。 何人分を想定しているのかは設計段階での計算となりますが、循環式ですとおよそ720人分を想定しています。
[質問 9] 列車内トイレで用いられる青い水、その化学成分と効能を教えてください。 青色になっているのは着色剤によるもので、汚物の色を消すためのものです。 成分的には、消毒剤として塩素が投入されています。
[質問 10] 列車内トイレの汚水処理についてお伺いします。 車内トイレから抜き取られた汚水が自然に還元されるまでの処理過程を教えてください。 また、その抜き取り頻度および処理費用を教えてください。 開放式、カセット式はおのおのの排出水が大地よりそのまま自然に還元されます。循環式は運転区所において抜き取られた後、浄化処理をして一般の下水として処理されます。 抜き取りの頻度は、車両の運行状態などにより大きく異なるのですが、金沢近郊を走る普通列車であればだいたい3日に1回、はくたかなどの特急列車になるとほぼ毎日抜き取りを行っています。 また、処理賛用についてですが、コストの計算は、トイレに限らず清掃・点検などを含め総括して計算されていますので、汚物処理のみの費用だけを抜き出すことは困難であります。 |