近年、普通列車から徐々にトイレが減りつつあります。ここではその理由を探っていきましょう。 「匂い」という点について、列車内トイレの場合、事態はさらに深刻です。列車は、いわば外界と遮断されて走るために給排水が困難となります。列車内トイレの多くが「循環式」ですが、この方式だと水を「繰り返し」使うことになります。具体的には、用を足して流したあと、濾過(固体物を取り除くこと)して消毒した後もう一度用いるという方法です。ですから、流れた「小」は再度「洗浄水」として流れることになります。先に『体外へ排泄された「小」はしばらくの間はにおわないが、10〜15分経過してからが問題だ』と書きましたが、その匂いも化学薬品(塩素)によって押さえつけているのです。ですが、回数が経過するにつれ、ブレンドされる「小」の方が化学薬品に勝ってしまうと、着色剤の青色が汚物に負け、ついに緑色になって流す度に得もいえぬ匂いがします。 JR西日本キハ120系 | | トイレなしのローカル線専用車両と言うことで、投入毎に物議を醸す。 だが、おおよそ利用客の乗車時間の平均は約 30分程度であるからトイレは不要、というJRの理論ももっともである。 ちなみに、第三セクター・井原鉄道の同型車両は真空式洋風トイレが装備されている。 | | | また、列車は「走ってなんぼ」のものです。列車が走ると車体は揺れます。すると、おとなしくしていれば定まっていた「的」が外れてしまい、横にそれてしまいます。特に男性の小用では、このようなことは多々あります。すると、これまた先に述べたメカニズムによって匂いが発生します。共用のトイレ、つまり和式便器の場合、「大」の人、及び女性はいやでもこの「濡れた床」を目にすることになります。こうなると、多くの場合は「駅まで我慢しよう」という気分になってしまうでしょう。 しかしながら、どんなに汚くとも「無いよりはマシ」ということもあります。人が一日にトイレに行く回数は5〜6回なので、一定時間にどれぐらいの確率でトイレに行きたくなるかを確率計算で求め、次ページにグラフで表しました。ちなみに、通常は2時間毎にいくものと仮定し、分単位で計算しています。 使わないトイレなら、そのスペースをつぶしてしまい、イスや通路にしようという考えが広がってきました。JR四国の1000系、JR西日本のキハ120系がそうです。この背景には、後で述べる屎尿処理設備のことが絡むのではないか?と個人的に考えています。結局、「今後は路線ごとの利用状況を見てトイレを設置するかどうかを決める」とのことですが、ローカル線ではますますトイレの設置率が減っていくといった情勢です。 (*追補) JR四国の1000型気動車は平成13年に試験的に2両をトイレ付き車両に改造し、以後も数両ずつではあるがトイレ付き車両が増えている。ただし、その改造費は1,500万円と決して安くはない額である。 JR九州も同様にトイレがないキハ125系気動車を改造し、全車両をトイレ付きにすることを発表した(平成15年事業計画)。 また、JR東日本・仙石線は地元住民からの要望を受けて陸運局が車両にトイレを付けることを指導。東京・山手線で活躍してきた205系車両が転籍する際に、バリアフリー対応のトイレを付けることになった。 これらの路線は走行距離が長いのに特急列車が無い、もしくは本数が少ないという共通項がある。 (平成15年5月追加/ちなみに本文は平成10年執筆) | |